「騙(だま)すよりも、騙されるほうが悪い」のか?
「騙(だま)すよりも、騙されるほうが悪い」
映画やドラマに出てきそうな言葉だが、これは現役の経営者やビジネスマンが口にする実際の言葉だ。この世をきちんと渡り歩いている事業者や商売人は、口に出さなかったとしても、このことは心の内側で思っている。逆に、この意識が無かったり薄い人は事業を継続させることが難しい、搾取されたり、隙(スキ)だらけのため不利な状況に堕とし込まれてしまうからだ。
これとは反対に「騙すより騙されるほうがいい」という言葉もある。これは確かに美しい言葉だと思う。私自身もそうだが、この文章を読んでいる方のほとんどが、自分を取り囲む周りの人のほとんどがいわゆる「善い人」だろうから、この言葉の世界に浸っているのが気持ちいいのはわかる。
しかし、事業者やリーダー、責任者としてやりくりしていくためには、防御や自分への戒めのという意味も込めて「騙すよりも、騙されるほうが悪い」という意識は必ず持っておくことが大切だ。
以下は、オーラ機械の話第一回の続きになる。私のスキだらけの恥ずかしい話だ。反面教師にしていただきたいという思いで綴らせていただく。
リースに出して、他力で稼ぐ方法
さて、オーラの機械には魅力は感じるが、130万円を投資して回収できるアテや準備が無かったので、即決して買うことは無かった。その旨を例の営業部長に話すと「それでは、もし機械を購入いただければ、うちの会社で企画するイベントに貸してしていただければ、弊社からリース代をお支払いします。機械を購入いただれば、うちの会社でその機械を働かせて報酬をお支払いします」と話を持ち出してきたのだ。単純な私は「とりあえず貸し出すだけで利益がでるなら悪くないな、その間に自分でもイベントに持ち込めるよう営業かけられるな」と思ってしまったのだった。
さて、途中は省略させていただくが、結局、私は130万円のオーラの機械を購入することにした。頭金10万円を現金で支払い、残りは5年の分割ローンで支払うようにした。このときは、買い物を高く感じる以上に、現状の新聞販売店の仕事から脱出したい思いが強くて、日々の苦しい感情を和らげたいという思いから買う方向に流れていってしまった。(今思えばだが、もっとお金のリスクを減らして、別の利益を生み出す方法を、もう少し探したほうがよかったのかなとも感じるが、、、)
そして1か月か2カ月後にオーラの機会の3点セットが届いたのだった。当時は一週間のほとんどが新聞販売店の仕事に裂かれ、月に6日ある休みの日も疲れてしまい、とてもオーラの仕事を生み出すほど元気が残っていなかったので、自力では利益を生み出すことはできていなかった。しかし例の会社が約束どおり、リースの仕事を紹介してくれたので、オーラの機械を貸し出すことで、リース代が報酬として振り込まれたのだった。「本当に振り込まれた!!」これが私のそのときの感想だった。
そんな感じで月に2から3回くらい、機械を貸し出して報酬を受け取ることがしばらく続いた。しかしそんなよい流れも、半年くらい過ぎたあたりから雲行きが怪しくなってくるのだった。
リ-スに出した機械が返ってこない!
あるとき、知り合いが開くイベントに、オーラのブースをつくって出店してみようという話になり、返してもらおうと営業部長に連絡をとったところ「○○日には届くように手配します」ということで待っていたのだが、2日、3日と約束の日を過ぎても一向に届かないのだった。連絡をとっても、留守電になったり、押り返しの電話がかかってこないようになっていった。「そこで、何かおかしいな?」とは感じたのだった。営業部長はなんだかんだ理由をつけて「もう少し待ってくれ」というばかりで、そんな状況がグダグダと数カ月続いたのだった。そして、ある日ついに電話が通じなくなる日がやってきたのだ。
電話が通じなくなって数日後、休みの日に八重洲口にあった会社に向かうとそこは「もぬけの殻」となっていたのだった。「こんなことが起こるなんて・・・」私の手元から希望の光だったオーラの機械は無くなり、残り4年分のローンだけが残ることになったのだ。テレビのニュースやドラマでは見たことがあったが、まさか自分がこんな目に会うとは予想もしていないことだった。
弁護士・裁判所からの通知が来る
それから数カ月後、突然弁護士事務所から電話があった。「〇〇会社の件ですが、未払いの売り上げ金などありますか?」という内容で債権者の調査をしているとのことだった。私は一連の内容を話、貸したオーラの機械が返ってこないことを話した。すると調査しますということで話は終わった。
さらに数か月後、今度は裁判所から文書が来た。内容は債権者の集まりだか、説明会の案内で、例の社長も来るという内容だった。
指定の日時に行ってみると、20人くらいの債権者と思われる人がいて、弁護士や裁判所の職員が同席して説明の場があった、女社長は「申し訳ありません」と謝ってはいたが、お金が無いので返済できないことを説明していた。なかには「金返せ!」と怒鳴る人もいたが、裁判所の職員は慣れているのか事務的に淡々と説明会は終わっていった。
後の調査で、私のオーラの機械は別の会社に売却されていて、その会社名まではわかったが、事情を説明して返して欲しいと説明したが、正式に契約書を交わして購入したものだから返却はできないと、相手にしてもらえなかった。
さらに同じ債権者からの情報で、例の営業部長は会社の役員や社員の名簿に名前が全く無かったそうで、書類上は倒産した会社と無関係となっているようで、関東北部の某所で何食わぬ顔で暮らしているというのだ。女社長との関係や詳しい内側の情報はわからないが、計画的に倒産させたというのだ。
私は当時はやり場のない怒りや、この世の無情を感じたものだ。この文章を読んでいる方にはこんな馬鹿なことにならないように十分に注意を払っていただきたいと願ってやまない。
まとめ
・素性の知らない人と重要な仕事をしてはいけない。シャットアウトする。
・設立から期間の短い法人や企業と取引するときは慎重にする。
・金銭物品のリースなどは前金払いにするとか保険をかけておく。
・うまい儲け話には乗ってはいけない(特に自分が弱っているとき、困っているとき)
今なってはほんの一部ではあると思うが「世間」の恐ろしさ、現実を学ぶことができた出来事だったと感謝している。